働きたいのに…妊娠2ヶ月の女の葛藤

働く女性の妊娠期間。

妊娠中は「誰もがやる気があれば働き続けられる」 「子供ができても出産ギリギリまで元気で過ごせる」というのは本当だろうか。 妻や周囲で妊娠後苦労している経験者がいない限り、女性のリアルは見えにくい。

妊娠中に多くの人が苦しみ悩まされる「つわり」。

人によって入院する重度のレベルの人もいる。妊娠中は、つわりだけではなく切迫流産などにより絶対安静になるケースは少なくない。

ほとんどの女性が、突然妊娠が発覚する。そして、人によっては突然「つわり」がやってくる。 思いもよらない体調変化と仕事への適応。 止むを得ず無理を続けた結果…

今回は、仕事も人間関係も順調、容姿端麗で社内の誰からも期待されるキャリアウーマン 瑠奈 31歳 のエピソードを紹介しよう。


新卒入社した会社で順風満帆にキャリアを積み、子会社の立ち上げメンバーとして奮闘していたキャリアウーマン瑠奈31歳。

彼女は、妊娠が判明した直後、突然訪れた「つわり」に戸惑い、葛藤するなか、社内で業務継続する道を模索していた。しかし、止むを得ず無理を続けた結果、絶対安静となったのだ。

「仕事がしたくないわけではない…むしろ仕事を続けていたいのに…」

多くのキャリアウーマンが、妊娠し、つわりを経験する中でぶつかる壁だろう。

瑠奈のキャリアは、大学卒業後に大手商社の総合職として新卒入社。順調にキャリアを積み、27歳で結婚。結婚を機に退職をする同期も多い中で、20代のうちは自分のキャリアに挑戦しようと、キャリアアップを目指し毎日奮闘していた。

5歳上の夫とは、瑠奈が30歳になったら子どもを授かれたらいいね、と前々から話していた。不妊治療の話もよく聞く中で、すぐにはできないと腹を括って、30歳の誕生日からゆるく妊活を始めた。すると、そんな心配をよそに妊娠が発覚。コウノトリがすぐにやってきたのだ。

子どもを授かり嬉しいのは当たり前。心から嬉しかった。

しかし、産休育休後の自身のキャリアに不安を覚えた。瑠奈は、新しく設立された子会社の立ち上げメンバーとして異動をして半年だった。瑠奈以外は、20代後半〜30代前半の男性5名だった。うち既婚者は1名。子どもはいない。各々で責任ある職務につき、全員が夜遅くまで働いている環境。産後に復帰できる環境ではなかった。

「私もついにお母さんになるんだ…エコーで見えるの胎児のサイズは2mm。正直、まだ何も変わらない。突然すぎてまだまだ実感もないけど、産後のキャリアのこと、働き方のこと、夫とどう両立していくか、考えることはたくさんあるな」

妊娠が発覚し、まもなくすると瑠奈に変化が訪れた。

「つわり」だ。

噂では聞いていた。つわりが酷くて入院する人もいれば、全くつわりのない人もいる。自分はどっちなんだろうか。

瑠奈の母親はつわりがなかったので、きっと自分も大丈夫だろうと思い過ごしていた。しかし、それは本当に突然訪れた。起き上がれないほどの吐き気。何をしても気は紛れない。

つわりは遺伝だという話は全くウソ。私はつわりが重かったのだ。まだ安定期にも入っていないので、公にできない。

いつ公にするのかー。

これは、働く女性が妊娠発覚した後に最初に訪れる悩みの1つだろう。
数名しかいない事業部で、決裁権のある仕事を持っていると、すぐに仕事を代わってもらえる人はいなかった。来月まで、スケジュールはパツパツに詰まっている。今あるスケジュールはどうにか乗り切らなければ…と気を奮い立たせて、商談の時だけは気を張って望んだ。

すると不思議と商談中は、吐き気がおさまった。商談に同席している仲間にも、苦しい顔を見せることはなく過ごしていたので、誰もが妊娠には気づいてなかった。

しかし、往復の移動では電車に乗れないほどの吐き気。仕方なくタクシーで帰宅するが、タクシーの匂いでも吐き気が止まらず、途中で降りたこともあった。

次第に無理を続けた結果、お腹の張りがやってきた。妊婦経験がある人ならわかるが、妊娠中のお腹の張りは危険信号だ。お腹が張るたびに、恐ろしく不安な気持ちに駆られる。

「お腹の子は大丈夫なのかな…私が無理をしてしまって本当にごめんね。早く無理しなくて良いように調整するからね」と、瑠奈は心の中でお腹の子に話しかけていた。

安定期に入るまでは公に言えない。流産の80%は妊娠4ヶ月の安定期になるまでに起こるという。医療機関で妊娠が確認できた妊婦のうち、15%は流産を経験すると言われ、決して低い確率ではない。そのため、安定期に入るまでは公にしない人が多いのだ。

しかし、職場の仲間に言わないことには、これ以上体に鞭打つことはできない…瑠奈は意を決してメンバーに相談した。妊娠のこと、そして重いつわりのこと。

妊娠については、喜んでくれていた。異動した時から、妊娠・出産を考えていると伝えていたから、そこまで驚きはしなかったと思う。

つわりに関しては、そうではなかった。

「つわりがひどくて、急に動けなくなるほどの日もあるので、突然今日の商談にいけないということも起きる可能性あがる。迷惑をかけたくないので、今ある仕事は責任を持って対応するから、今後の対応を相談したい」と打ち明けた。

会社の反応は、「前の部署で一緒だった人は、生まれる1週間前まで会社来てましたよ!早く楽になるといいですね!」

それ以上でもそれ以下もなかった。

楽になる時がいつかわからないが、すぐに楽になると思われている恐怖。完璧主義の瑠奈は、今の体調でクライアントにも迷惑をかけずに対応する方法を一緒に考えたかった。そのレベルまで話し合うことすら出来なかった。

このとき、初めてわかった。いくら伝えても伝わらない人もいること。

職場で妊娠・出産する上司や同僚が近くにいない限り、どうやって仕事を調整していくのかも想像つかないだろう。

そんなこんなで、仕事量は変わらず商談を繰り返していた、ある日、私はついに出血した。

「妊娠初期 出血」とネット検索してみると、怖いことしか書いていない。

もしかしたら、これはただごとじゃない。

そう思った瑠奈は、夫に相談し病院に連絡。いつの温厚な電話口の看護師が「いつからですか?症状は?出血の量は?」と口調の強さから、ただごとじゃないことは予感していた。

すぐに来るように言われ、緊急で診察をしてもらうと、医師からの指示は「絶対安静」だった。

「出血は普通じゃ起きない。原因はわからないけど、何か異常が起きているから出血していることは間違いない。お腹の子を守れるのはお母さんだけだよ」

朦朧とするなか、医師と看護師にそんな言葉をかけられた記憶がある。

初めての妊娠。この吐き気がどの程度のものなのか、このお腹の張りは危険性があるのか、正直わからないことだらけだった。

「絶対安静」と診察された私は、自力で起き上がることができなかった。そのため夫から担当部署へ直接電話をしてもらったが、何度かけても誰も電話に出なかったのだ。平日のお昼前だった。

この危機迫る時に、夫が会社へ交渉のための電話をしてくれたにも関わらず、誰も出ないことにも非常に強い不安と不信感を覚えていた。

仕方なく、力を振り絞りメールをした。医師からの絶対安静という指示が出たということを伝えると、ようやく事の重大さがわかったようだった。それはメールの文面からも伝わった。

しかし翌日きたメールに衝撃を覚えた。

「ベッドの上でもパソコンは開けるでしょ?オンラインでの顧客対応ならできるよね。会議はオンラインで参加してくれれば良いから、ゆっくりしてね!」…こんな内容だった。

瑠奈は、全ての業務から解放されたのは2ヶ月後だった。


世の中にこういった体験談が出ていないだけで、同じような経験している女性は少なくない。そのため、妊娠中に退職することでしか、自分と子どもの安全を守ることができないというケースもある。

企業として女性を採用している以上、年齢、既婚未婚、子供の有無は関係なく経営者や部下を持つマネジメントクラスには、一定の知識を得る責任があるのではないか。

このような無理強いをして、お腹の子にもし危険なことがあったら…どうするのだろうか。自分の奥さんだったらどうしていたのだろうか。根性論では解決しない問題も、まだ根性論で語られてしまう現実。

このコラムでは、今後もさまざまな働く女性の経験したエピソードを紹介していきます。