第二子妊娠五ヶ月。理想の人生を歩んでいるはずなのに…漠然とした不安を抱える女の葛藤

30歳前後で結婚して、子どもは二人。夫の稼ぎだけでも生活はできるけど、自分の好きな仕事をずっと続けていきたい…。

 

大手企業に新卒で総合職として入社して10年。
34歳の梨沙は、その間に結婚・出産を経て、時短勤務で職場復帰も果たしていた。娘は3歳になり、子育てと仕事のバランスをうまくとりながら、日々の生活にも慣れてきた。

 

「そろそろ二人目がほしい」という夫婦一致の希望で、念願の第二子妊娠だった。初期はつわりに悩まされたものの、今は落ち着いて経過は順調だ。

梨沙は、なんとなく20代の頃に思い描いてきた通りの理想の人生を歩んでいる、という自負はあった。しかし、二人目の産休を目前にした妊娠五ヶ月の夏、梨沙は漠然とした不安に苛まれていたのだ。

 

それはなぜかーー。

新卒から10年以上働いてきた職場は、幸い人間関係も良好。子育て中の社員に対する理解もあり、手厚い。特に娘の育休復帰直後は、急な発熱等で休みが続き、仕事にならない週もあったが、上司や同僚が嫌な顔ひとつせずフォローしてくれたのは、本当にありがたかった。

働く母親としては、とても恵まれた環境だと思う。もちろんそこに甘えることなく、仕事に取り組める時間は、今まで以上に全力で、効率を高めて必死に取り組んできた。

 

しかし、キャリアアップとしてはどうだろうか。

時短勤務の社員に対しての「理解」はあるが、「期待値」は低い。評価方法は、フルタイム社員とは異なり、給料も大幅にカットされている。このまま、二度目の産休、育休、時短勤務を続けていれば、どんどん同期に遅れを取ってしまうだろう。

 

どんなに梨沙が効率を高めて、短い時間の中でフルタイム社員と同様かそれ以上の成果を上げたとしても、今の職場の制度が変わらない限り、「時短勤務」であるというだけで、評価やポジションがあがる望みは薄い。

 

いっそのこと「フルタイムで復帰してはどうか?」と自問してみるも、現在の状況では現実的ではない。夫は子煩悩で、家事育児もそれなりにできるが、平日は残業や職場の飲み会も多くほとんど戦力にはならない。平日はワンオペだ。

 

私は子どもが生まれてから生活が一変したのに、どうして夫はほとんど変わらないんだろう?

 

一人目の育休中の一年間で、なんとなく「母親が平日の育児を担当することが当たり前」になっていた。それが復帰後も尾を引いているのかもしれないーー。

 

もちろん復帰前に家事育児の分担については、話し合った。しかし、夫の担当はあくまで仕事に響かない範囲で出来ること。梨沙が時短勤務であることが前提での役割分担になっている。

 

現状の娘一人でも、なんとか平日ワンオペを乗り切っているという状況なのに、二人になったらどうなるのだろうか…。食事の準備は?お風呂は?寝かしつけは?

 

梨沙は、漠然とした不安に駆られていたーー。

 

二人目出産を機に、子育て中でもスキルアップやキャリアアップが可能な企業に転職することも頭をよぎった。しかし、小さな子どもを二人抱えての転職活動は、容易ではないだろう。転職先が、働きやすいかは正直入社してみないとわからないことのが多い。そう考えると、現在の恵まれた環境を手放すのは、とても勇気のいることのように思えたのだった。

 

「そもそも私はどうしたいのか?」自問自答を重ねる日々。

 

何歳で結婚して、何歳で子どもを産んで、仕事はずっと続ける。

そう人生設計をして、その目標に向かってがむしゃらに頑張ってきたけれど、自分のキャリアについてじっくり立ち止まって考えたことはなかったのかもしれない。

 

他人から見たら「贅沢な悩みだ」と一笑に付されるかもしれない。けれど堂々巡りの思考がいつも心のどこかにひっかかっている。思い通りの幸せな人生を歩んでいるはずの梨沙の心は、漠然とした不安と答えのない悩みがつきまとっていた。

 

そんなとき、梨沙のもとに意外な人物からの連絡があった。


次回からは梨沙と同じような壁にぶつかって、それを乗り越えた女性たちのエピソードを紹介します。