育児はもっと人の手を借りていい。大手メディア編集部で初めて育休を取得した男性社員として、伝えたいメッセージ

盛田諒(Ryo Morita)さんプロフィール

株式会社角川アスキー総合研究所が運営するメディア「ASCII」の編集者。1983年生まれ。2017年に男児を授かり、1児の父親に。その後8週間の育児休業を取得して職場に復帰した。


盛田さんはメディアの編集者として、子育てなど様々なトピックについて記事をご執筆されていらっしゃいますよね。

メディア「ASCII」で編集者として暮らしに関連する記事を執筆しています。幅広いトピックを扱うメディアということもあり、職場の雰囲気は「仕事も趣味も皆違うのが当たり前」「相手は相手、自分は自分」という特徴があります。

同じメディア業界でも例えば専門誌の場合は皆が同じ方向を向いている場合が多いと思いますが、アスキーはまさに多種多様です。子どもがいる社員は3割ほどで、子どもの年齢も比較的近いことが多いので、子育てに関する話もよくしますね。

普段はプロジェクトベースで働くことが多く、日々の仕事内容については原稿をまとめる役割である「デスク」に相談しています。記事に関するレポートや働き方については、また別の上司に相談する体制です。私が育休を取得する際は、まず上司に相談しました。

アスキー編集部・男性社員で初めての育休を取得

メディアで働く男性社員の方が育休を取得するというのは、珍しいケースのように感じています。

確かにアスキーでは、私が男性で育休を取得した初めての事例になりました。当時は自分が担当していた連載を若手に任せるなど、少しずつ仕事の調整を進めていきました。上司からの「一緒に色々と方法を考えていきましょう」というコメントを聞いた時は、とてもありがたかったですね。

育休中の家事については、妻とは特に分担はしていませんでした。基本的に私も授乳以外は何でもやるという気持ちで育児に臨みました。育児は性別問わずできるものですので、やれるほうがやるというスタンスです。 

素晴らしいお考えですね!

産後は全治1ヶ月の負傷状態と同じだと言われているので、妻に栄養バランスの良い食事をとってもらうため、料理の本を買って育休に挑みました。しかし完璧主義を目指してしまう自身の性格のせいもあり、次第に家事に忙殺されてしまって。大人と話す時間や趣味を楽しむ時間がなかなか取れず、とても大変でした。そこで始めたのが育児コラムの執筆です。男性の育休に関するまとまった情報がなかったため、自分の体験などを発信することにしました。

コミュニケーションのツールとしても活用されていたのですね。

育児をしているとどうしてもたまってしまうモヤモヤを吐き出す場として、私にとってはとても救いになりました。ほかにも記事を読んでくださった読者ママがフォローしてくれるなど、皆さんの育児に対しての考えを知るきっかけになりましたね。

育休を経て、仕事の生産性が向上

育休後はどのようなスタイルで働かれているのでしょうか?

子どもが生まれるまでは時間を問わず「仕事が終わるまで働く」というスタイルでしたが、今の自分にできることや仕事に使える時間には限りがあります。そのため本当にやるべきことを見極めて、仕事に取り掛かる必要性を感じるようになりました。集中すべきものにフォーカスすると、やるべきことが自然とはっきりしていきますね。

育児が自分の生活サイクルに加わったことで、「いつ予期せぬことがあるかわからない」と認識しました。そこで大事だと気づいたのが、仕事の段取りです。瞬発性は落ちてしまったかもしれませんが、余裕をもって仕事のスケジュールを組んだり記事を執筆できるようになったりして、生産性は向上しました。

すごく理想的なお話ですね!逆に困ったことはございませんでしたか?

仕事に使える時間が減り、体力のゆとりはなくなりました。始業時からぐったりしていることもあり、金曜日は使いものになりませんね(笑)。

奥さんとは現在どのように家事を分担されていますか?

家庭内で特に家事の分担や明確な役割などは決めていません。お互い得意なものとそうでないものがあると思いますので、やれる方がやっています。もちろん妻とはケンカもしますが、特に子どもが生まれてからは、自分で気持ちをコントロールし、苛立たないように工夫するようになりました。

ご自身と向き合われて、折り合いをつけていらっしゃるのですね。

例えは部屋が散らかっていた時に相手に片付けをお願いしようとすると、お互いに言い合いになってしまう場合もありますよね。そういう時は自分が空いている時間で片付けてしまえばいいやと考えるようになりました。

育休の取得だけでなく、人の手を借りられる育児を広めたい

育休を取得されてから3年ほどが経ちますが、現在はどのように働かれていますか?

今は新型コロナウイルスの影響もあり、妻と調整して、だいたい週に3日出社する生活を送っています(6月1日取材時)。家族と一緒にいる時間は増えたのでありがたい一方、現在の社会をみていると、果たしてこのままでいいのだろうかという疑問はぬぐえません。私は育休を取得できておかげでとても色々なことを経験できましたが、私のように育休を取得できる人は残念ながらまだほんの一握りです。外出を自粛した方がいい期間でも、医療機関で働く方はもちろん、生活用品を販売するお店で勤務している方などは、休みを取るのはなかなか難しいですよね。

おっしゃるように、育休の取得が難しい方もいらっしゃいますね。

テレワークなどを導入し、ワーク・ライフ・バランスを考えて働ける人は、決して多くはありません。そのためどれだけ恵まれた立場にいるのかを自覚し、自分には目の前の仕事を通じて何ができるのかを考えるようになりました。今は「育休を広めたい」というよりは「育児を家庭内だけでなく、もっと誰かの手を借りて取り組めるものにしていきたい」という思いが強いですね。近所同士の助け合いの延長にあるような、困った時に互いに助け合える育児の文化を作っていくためにも、等身大の自分で執筆する記事を発信していきたいと思います。

育休を通じて、人生の価値観が広がった

育休を実際に取得されて、どのようなことを感じましたか?

生活はとても多面的なものであり、仕事はそのほんの一部だと思うようになりました。「男ならこうあるべき」という(仕事についての)考えや論理が、気づかないうちに自分の首を絞めてしまっているのですよね。仕事をしている以上は何者かにならなくてはいけない、記者として第一線にいなければいけない。とにかく稼がなくてはいけない。色々な固定観念もあると思いますが、仕事だけが自分を構成する要素では決してありません。家族といる自分も自分ですし、仕事をしている自分ももちろん自分です。

今後は「自分は自分、仕事は仕事」とメリハリをしっかりと付けていきたいですね。ですがせっかく育休を取得したという経験があるので、育児をするなかで困ったことや、社会とのつながりがなくて苦しい時に頼っていただけるような記事を執筆して、読者の皆さんに届けていきたいです。

最後に、育休取得を考えるパパにぜひ一言お願いします!

育児はとても大変ですが、環境的に取得できるのであれば、ぜひ育休を取得してみてください。新生児期というのはとても短いので、できることは何でもトライしてみることをおすすめします。子どもの世話に手間や時間をかけた分だけ愛情も湧いてきますし、自分にとっての財産にもなります。育休を通じて、ぜひ人生の価値観を広げてみてください!


あらゆる環境の変化にご自身を客観的に考察し、家族のために行動されるお姿は、さすがでした。

現在も育児に関する等身大の記事を執筆されている盛田さん。

是非チェックしてみてくださいね。

Mrelationsでは今後も、育休を取得されたパパやそのパートナーにインタビューを行い、その貴重な経験を皆様にナレッジシェアしていきます。インタビューに答えてくださる育休取得経験のあるパパも大募集中です。