仕事と育児の両立はリソース半減ではない。二本の燃料でどう走るか―—PR TIMES執行役員名越さんが考える良い状態で働くための環境づくりとは

名越 里美さんプロフィール
株式会社PR TIMES 執行役員 兼 社長室長
1987年11月20日生まれ
2011年にPR TIMES入社。プレスリリース配信サービスの営業活動をベースに、自社コンテンツやユーザー向けイベントなどを企画。その後、PRプランナーとして化粧品、ホテル、ベビーなど複数のクライアントを担当した後、産休・育休を取得。
18年4月に復帰し、コーポレートカルチャーマネージャーとして、ラジオチャンネル開設、オウンドコンテンツ編集、CI広告ディレクター、社員総会企画、経営合宿企画など組織のブランディング活動がメインに。19年10月の新体制より執行役員 兼 社長室長に就任し現在に至る。

いまのキャリアのイメージを最初から持っていたわけではない

まず、いまのお仕事に至るまでのキャリアについて教えてください。                       

新卒で広告代理店に入社後、営業として働いていました。その後転職活動をする中、縁があったのがPR TIMESで、入社に至りました。

入社後は、ずっとクライアントワークを担っており、最初はセールス・マーケティング職として勤務。部署異動ののち、1年弱経過した頃に子どもを授かり、2017年春に出産、約1年後に復帰しました。

いまのお仕事の内容や役割について教えてください。                       

復帰後は、いくつか役割の変化を経て、2019年10月より現職で、執行役員・社長室長として働いています。社長室には私を含め計4名のメンバーがおり、事業・組織のそれぞれで横断的な機能を持っています。私は組織の成長をメインに、PR TIMESのマーケティングにも幾つか関与しています 。

女性でこれまで産休育休取得された方はいらっしゃいましたか?                  

はい。取得の実績は会社としてあったので、取得できないかも?という不安はほとんどなかったですね。

妊娠が分かってから産休に入るまで、復帰後について、具体的もしくは漠然とでも働き方のイメージやビジョンは持たれていましたか?

産休前は正直、先のことは全く考えられていなかったです。一人目だったこともあり、無事に走り抜くことがまず第一優先。

近しい友人から「切迫早産になり急に会社に行けなくなってしまった」という話も聞いていたので、なるべく会社に迷惑をかけないこと、それを一番に考えていました。いま私自身もそうなのですが、周りに妊婦さんがいると、「無理してないかな?」とかやっぱり気掛かりなんですよね。

過剰な心配はされないよう、振舞っていたかなと思います。

でも、出産後、まして職場復帰をしたあとのことは、正直全然想像できなかったですね。そのときの自分がどんな心境か、どんな優先順位を持っているか、全く考えられなかったんです。ただ「復帰する」ということ、それだけは決めていました。

家事育児の分担よりも、”働く自分を理解してもらえている”状況に救われた

旦那さまは、名越さんのキャリアに対してのご理解はあるのでしょうか?               

お互いにとことん仕事をするタイプではあったので、私が仕事を続けていくことに対しての理解は元々ありました。

ただ育休取得の1年間、私が専業主婦のような生活になると、夫婦ともに、それが当たり前のリズムになりますし、お互いの関係値も少し変わります。

すると、そのまま職場復帰を迎えたとき、私が「以前と同じように、仕事もアクセルを踏んで頑張りたい」と思っても、心理的・肉体的な負荷は、私だけではなく夫にもかかってしまいました。仕事復帰したばかりの頃は、お互いに慣れるまで難しかったです。

今は夫も私の仕事に対して、改めて理解してくれているように感じます。その変化は、やはり執行役員になったことが大きかったように思います。

その変化は、「家事・育児」における具体的な分担が変わったのか、もしくはコミュニケーションや感情面の変化、どちらが大きかったのでしょうか?

後者に近いですね。家事育児を負担してくれる割合も、確かに増えました。ただそれよりも、”自分が仕事をすることについて、パートナーが理解してくれている”という事実の方が、私は大事でした。そのような意味では、今とても救われているように思います。

普段はどのように家事育児を分担されているのでしょうか?                    

基本方針は、「家事育児はすべて私がやる」です。ただ私ができないところも多いので、夫には相当量フォローしてもらっています。

思い切った決断ですね…!なぜ「家事育児は全て自分が担当」という体制にしたのでしょうか?

以前は、分担が確実に必要な保育園の送迎のみ、朝は夫、帰りは私と分けて、それ以外の家事はざっくりと分けていました。お互いができることを、できるときにやるようにしていたんです。

しかし、どこの家庭もそうだと思うのですが、「どちらにもボールがないグレーの仕事」は、早く拾った方がやるようになる。そうなると、負担の割合が徐々に変わっていくので、その都度衝突しますよね。

私はそれが嫌だったので、家事育児は例外なくすべて私がやる、と途中で宣言しました。そうすると、不思議と夫がサポートしてくれる範囲が広がりました。私自身もフォローしてもらえたことに感謝できるようになったんですよね。精神的には、だいぶ楽になったかなと思います。

「仕事にもっとコミットしたい」会社が応えてくれたこと、自分が変えたこと

復帰されてから、育児と仕事の両立で一番「壁」となったことはなんでしょうか?               

時間の確保ですね。一週間の中で仕事に使える時間は、体感値として3〜4割減だったので、目の前にある仕事を進めることに精一杯。出産前は週末に確保していた、一歩引いて自分の考えを整理したり、何かを意思決定するためのリサーチをしたりする時間がなかなか持てませんでした。

オフィスにいる時間は、まず「周囲に迷惑をかけないように仕事をこなしていく」ことだけを考えていて、腹落ちしないまま進めてしまっていることも正直多くありました。

それでも、日々仕事はある。”時間が足りない”という問題を、どのように突破すればいいか分からないまま、夜や朝の時間を使ってみたり、いろいろ試してみました。

するとだんだん体力が追いつかなくなり、結果として、子どもとの時間にも影響が出てしまい、ジレンマでしたね。

その後、どのように状況を変えていったのでしょうか?                      

復帰して半年頃でしょうか。やはり、自分の中に「もう少し仕事にコミットしたい」という思いは強くあったので、それを率直に会社に相談しました。相談というか、交渉といいますか。仕事の時間は、高い目標を立て、みんなと同じように頑張りたい、と。であれば、まずは働き方を変えてみたら?と会社側が提案をしてくれました。

結果として、そのタイミングで、働き方を時短勤務からフルタイムに切り替え、仕事の役割も、クライアントワークから組織の仕事へと大幅に変わることになりました。

そこからは、覚悟が決まりましたね。会社が後押ししてくれたとするならば、自分はどうするのか。生活のリズムや1日の時間の使い方などを改めて見直しました。

今は、働く時間を10時間確保し、朝型に切り替え、会社を出るのは17時半と決めています。また夜9時半には子どもと就寝する、というリズムにして、朝の時間を活用しています。その分は夫に負担してもらう形を取って、今はこのかたちがベストかなと思っています。それでもまだまだ試行錯誤の過程にいます。

乗り越えてきた名越さんですが、いま感じている課題はありますか?                

本当の意味で「ひとり」の時間が少ないことですね。もはや、そのような時間がなくてもストレスが溜まるわけではないので、エコシステムモードのようにはなっているんですが。。

もっと映画を見たり、普段触れていないことを楽しむ時間をつくれたら、とは思いますね(笑)

仕事でパフォーマンスを上げるためには、家庭の基盤をしっかりと固めること

周りに迷惑をかけないことを心掛けるなかで、コミュニケーションで心掛けていたことはありますか?               

今もまだ上手くできているわけではありませんが、常に良い状態で仕事をするためには、まず自分が何かを変えないといけないと思っています。

もちろん、周囲の協力を仰ぐために、調整の方法やコミュニケーションの仕方を考えるのも大事だとは思うのですが。

「良い状態で仕事をするために一番大事なこと」というのは、名越さんにとって何ですか?               

良い状態で仕事をするために一番大事なことは、家庭の基盤を整えることだと思います。自分の実感も含め、仕事でいいパフォーマンスをし続けるためには、共働きでお互い時間がないなかでも、ちゃんと「まわる家族」を作ること、それが大事なのかなと。

具体的には、夫婦間の細かいルールを共通のノートに入れるようにしています。例えば、”お互いの育児のやり方には干渉しない”というルール。私は子どもの就寝時間に結構こだわりがありましたが、夫は子どもの気持ちが満たされるまで一緒に遊びたいタイプ。

以前は、「なんでこの時間に寝かせてくれないの?」と睡眠の重要性を説いていました(笑)だけど、そのルールを決めて以降、今は干渉しません。お互いのルールのもと、日によって違ってもいいよね、としています。

家事のやり方も同じです。正直、「あれ?」と思うこともありますが(笑)

職場でも同じですが、人はみんな個体として違うので、価値観やルールも違います。

仕事であれば同じ目標のもと、一緒に走ることは実現しやすいかもしれませんが、家族は目標を強制する存在ではない。そういう考えになってから切り替えられるようになった気がします

こうなるまでに二年くらいかかってますね(笑)。

育児をしていることで、仕事の価値観が変わったことなどはありますか?               

組織に対する向き合い方や考え方が変わったかなと思います。    

子を持つ女性であれば、子どもは自分のお腹で育って生まれているし、これ以上ないほど「近い」存在なんですが、やっぱり全然自分とは違う別の人間なんです。どれだけ大切でも「同じ」ではないということを、子どもと過ごす日々の中で強く感じました。

だからこそ、組織に目を向けたときに、一人ひとり「違う」ということがリアルに感じられました。そして、皆一人ひとり大切な人や、支えてくれた人、愛を注いでくれた人がいるんだよなぁ、と。

様々な縁が集まってPR TIMESで一緒になった社員の、充実や働くやりがいをより良くしていくことのできる今の仕事は、自分にとって、とてもはまっていると思います。

そのような気付きを得られたのは、子どもとの出会いがすごく大きいですね。

”生きたサンプル”として、育児と仕事の両立を自分の生き方で実証していきたい

今後、どのようにキャリアを歩んでいきたいと考えていらっしゃいますか?               

自分が深く共感するミッションの実現に向け、日々まい進する会社の組織やカルチャーを、けん引するひとりでありたいと思います。

組織は、”植物を育てる”ようなイメージがあるんですよね。植物を育てるためには、水をあげたり、お日様に当てたり、土を変えたり…やれることがたくさんあって、いずれも欠けては育たない。植え直すのではなく、これまでの成長を大切に、より大きくしていく、そんなことをやっていきたいなと思います。

最後に、育児と仕事どちらかに限らず、ご自身として「こうありたい」というビジョンがあれば教えてください。

いつの時代になっても、私たちが経験するライフイベントは大きく変わらず、会社の若い世代や子どもたちの世代など、みんな様々な経験をするはずです。結婚の選択や、軸足が仕事か家庭かなど、人によって自分らしい生き方は違いますが、自分もひとつの”生きたサンプル”のような存在になれたらいいなと思っています。

仕事に育児が加わることで、リソースが半分になる、のではなく、燃料が二本になる。二本持って走るときにはこういう走り方がある、道の選び方があるーーそんなことを、一つのオープンソースのように、選択肢が増えるきっかけをつくれる存在になれたらいいなと思います。

子どもの未来を考えたときに、恥ずかしくないような仕事をしたいと思いますし、それが社会のために積み重ねていくものでもありたいと思っています。

だからこそ、育児と仕事は両立できるよ、というのは自分の生き方で実証したいですね。両立したいけど、課題が山積みだったり辛かったり。でも前向きに何とかしたいって思う人は多い。そんな人たちにとって、自分の経験も誰かの後押しになったらいいなと思っています。


今回は、先日執行役員に就任されたばかりの名越里美さんにお話を伺いました。

ひとつひとつ、育児や仕事の課題を意思強く持ち、行動に移し解決をしていっている名越さん。そんな名越さんの口から出てくるお言葉はどれも温かく、すべての根底には、「周りへの感謝や思いやり」があるように感じられました。

育児と仕事でリソースが半分になるのではなく、燃料を二本持てる――育児と仕事を頑張って両立したいけど、壁にぶつかっている方々に向けて、具体的な解決のヒントやマインドの持ち方など様々なアイディアを頂けたと思います。