今回はフリーランスライター・編集者で、4歳の男の子パパである北野啓太郎さんにお話を伺ってきました。
お子さんの誕生をきっかけに、パパ向けの子育てウェブマガジン「パパやる」を開設し、パパ目線の育児の苦労やコツをほぼ毎日更新していらっしゃいます。記事からも子育てに積極的な様子が伺える北野さんに、ママの妊娠中からパパができることや、乳幼児の子育て期間に起きたこと、そして現在4歳になるお子さんの子育てについてたっぷり聞いてみました。

フリーランスライター・編集者 北野 啓太郎さん
1973年大阪府岸和田市生まれ、東京都世田谷区在住。
レゲエ専門企業のロッカーズ・アイランドに勤務し、およそ10年間、同社が運営するウェブマガジン「ROCKERS channel」の編集長を担う。国内外のアーティスト・インタビューや注目曲の解説などをコンテンツに、「生活の中にレゲエを加えることの楽しさ」を伝えてきた。しかし、もっと幅広いジャンルで勝負をしたいと思いが募り、フリーランスに。
現在は、ひとつのメディアの枠から飛び出し、雑誌、書籍、フリーペーパー、ウェブ、音楽CDのライナーノーツなど、様々な媒体での記事執筆を行っている。2014年には第一子が誕生し、父親目線の個人サイト「パパやる」を開設。子育ての大変さと子どもの可愛さに翻弄されながら、「こんな面白い経験は今までしたことがない!」と衝撃を受け、育児の苦労やコツをほぼ毎日更新。他にも、働くママ&パパに役立つノウハウ情報サイト「日経DUAL」へライターとして参加したり、TBSテレビの朝の番組「ビビッド」や、全国の赤ちゃん本舗や保育園で配布しているフリーペーパー「Bonjour ach」などから取材を受けたりし、子育てにますますのめり込んでいる。
・パパやる https://papayaru.com
現在のワークライフ環境
M relations 今日は、パパ目線での「ママとの関係性」や「育児」「ワークライフバランス」などについて色々お伺いしたいします。まずは、北野さんの現在のワークスタイルについて教えてください。
北野さんは、音楽関係の会社に長らく勤め、そこでレゲエ専門のメディアでご活躍された後に、独立されたと聞きました。会社を辞めてすぐに、奥様の妊娠が判明されたそうですが、もし妊娠発覚時に会社員だったら、その後フリーランスになるのを留まっていましたか?
北野さん そうですね。ちょうど独立して「これから頑張るぞ!」というタイミングでした。当時勤めていたロッカーズ・アイランドという会社は柔軟に働ける職場でよかったのですが、仕事柄、土日や深夜の音楽イベントを取材する機会が多かったり、深夜まで仕事に打ち込む日も多かったりしたので、「子育て」をするにはちょっと厳しい環境だったかもしれないですね。
ただ、心の中には「いつかは独立」の想いがあったので、やっぱりこれを機にフリーランスになっていたと思います。赤ちゃんがいる状況で、朝方に帰宅しきたり、土日もいなかったりでは大変ですもんね。
なるほど。昼夜逆転してしまうと、ただでさえ家族のコミュニケーションが取れなくなってしまいますよね。ところで、最近よく話題に上がる「パパの育休」について、どう思いますか?
会社で働く男性の育児休業は、本当に難しいと思います。男性の育休取得率が低かったり、取得日数が少なかったりするなかで、半年、1年休むというのは、野心溢れる他の社員が頑張っているなかで厳しいです。実際、僕の身近では1週間程度の休みが主流で、何ヶ月も仕事を休んだという話はほとんど聞いたことがありません。
そうですよね。まだまだ男女ともに育休の課題は多くありそうですね。ちなみに、奥様はどんなお仕事をされているのですか?
アパレル系の会社で企画やデザインをしています。会社員としてオフィスに出勤して働くスタイルなので、フリーランスの僕とは違い、働く場所や時間を選べません。でも残業はせずに、定時で帰宅できる日が多いので、我が家は家族みんなで夕食をとるのが日課です。
保育園の送迎や家事、役割分担はどうされていますか?
子どもが生まれる前は、夫婦ともに終電で帰って、深夜2時からふたりでお鍋をつついたりするような生活だったのですが、子どもが生まれてから180度生活が変わりましたね。保育園の朝の送りは、フリーランスなので朝の通勤がない僕が行くことが多いです。お迎えは、どちらか行ける方が行ってますね。
家事も役割を決めるのではなく、どちらかできる方がやればいいので、僕もよくスーパーへ買い物に行くし、料理もしますよ。
そうすると、自然とお互いに「ありがとう」と声を掛け合う会話が増え、日々感謝の気持ちが生まれるので、夫婦の関係性も良いと思います。
素敵ですね。ちょっとしたことでも「ありがとう」を伝えることって大事ですよね。仕事をしながらの家事・育児は大変かと思いますが、時間の使い方に心がけていることはありますか?
夜中に、翌日の食事の仕込みをすることがあるのですが、Bluetoothイヤホンで情報をインプットしながら調理していますね。料理に限らず、音声コンテンツを聞きながら家事をするというのは、自分にとっても有意義な時間になり、楽しいですよ。
妊娠判明直後に夫婦で学んだ”妊娠40週”や”育児”
私たち「M relations」は、プレママから現在育児に奮闘されている働くママに情報をおお届けし、育児をしながらキャリアを継続していく中で、周りと良好なコミュニケーションが取れる手助けをしたいと発足しました。
奥様の妊娠中にパパが知っておいた方が良いことや、自ら勉強したことはありますか?
妊娠が判明して、妻と一緒に妊娠や育児にまつわる本を買いに行きましたね。そのあと一緒にでカフェで読んだのを覚えています。
妊娠中はカフェイン摂取を控えめにすると良いとか、おなかの赤ちゃんがどうやって成長して行くかとか、そこで知れたことがたくさんありました。
二人で一緒に読む、というのが素敵ですね。もともと子どもについて話すことはあったのですか?
いや、なかったです。フリーランスになったばかりというのもあり、「仕事が落ち着くまで、子どもはいらない」と考えていました。今思うと、いつになっても落ち着かないので、決断してくれた妻には感謝です(笑)
「子どもはまだいい」という考えから変化したのには、何かきっかけがあったのですか?
妻が妊娠する前のことですが、生後6ヶ月の赤ちゃんがいる友人家族と一緒に温泉旅行をしたんです。旅館で大きな部屋を借りて、みんなで雑魚寝をして。それがすごく楽しくて、「赤ちゃんがいる生活っていいな」と。
ただ、その友人の赤ちゃんはとても大人しい方だったんですね。僕は「想像していたより子育てって楽勝だな」と思ってしまって。でも、生まれてきた我が子は全然おとなしくなかったんです(笑)
赤ちゃんとの旅行っていいですね! 子連れの友達と一緒に食事へ行っても、過ごせる時間はせいぜい2〜3時間ですが、丸1日、1泊2日とずっと一緒にいると育児の疑似体験ができますね。
これから赤ちゃんを考えているご夫婦は、赤ちゃんのいる友達家族と旅行に行くのオススメですね。
この旅行、もしかしたら僕をその気にさせるために仕組まれたものだったかもしれないのですが、結果的にその気にさせてくれた友人家族と奧さんには感謝しています。
“ママじゃないとダメな時期” は、2歳くらいまで続いた。
4歳の今では、夫婦それぞれが子育てを楽しめるように
実際に妊娠期間を経て、産後はどうでしたか?
どうしてもママじゃないとできない育児タスクって、結構多いんですよね。授乳はもちろんですが、赤ちゃんは、ママに抱っこされてされたり、ママの匂い感じたりするだけでも、安心して落ち着く。このことは妊娠中に育児本を読んでわかっていました。
あとはやっぱり、産後の女性はすごくイライラしがちなんですよね。ちょうど「産後クライシス」という言葉が出だした時期で、僕は関連本を買って、子どもを抱っこひもで抱きながら、公園のブランコで本を赤ペン持ちながら読みましたよ。「イライラにはホルモンバランスが関係してるんだな」と学んで、少しずつ理解していきました。
産後の身体に起きる自然な現象は、受け入れないといけない。そこで、人に優しくするための本も読みました。ママの攻略方法的な本です(笑)
北野さん、凄すぎます!そこまで勉強熱心なパパ、聞いたことないです。
奥様幸せですね。何か本を読んでから、心がけたことはありますか?
まず相手がして欲しいと思うことを、率先してやる。「やってくれない」「もっとやって欲しい」という不満をためるより、「ありがとう」の感謝を増やす方が楽しいじゃないですか。また、これは今もずっとですが、日頃から夫婦でちゃんと会話をするようにしてますね。
おっしゃる通りですね。そこはパパも努力して欲しいし、ママ側も努力すべきですよね。ついイライラしちゃっても、あとできちんと謝るとか、日々の感謝を伝えるとか、お互いに努力していきたいですよね。
産後を振り返って、パパが思うこと
今、お子さんは4歳とのことですが、産後から振り返ってみて、いかがですか?
僕たちは東京都世田谷区で暮らしていて、お互いの実家が大阪にあります。近くに頼れる親族がいないこともあり、保活は必須でした。保活に関しても、事前に色々調べたましたよ。まずは生後8ヶ月から認可外保育園に預け、次の4月に生後11ヶ月から認可保育園に入れました(激戦の世田谷区で第一希望!)。
保活は大変ですよね。第一希望に入れたなんて、すごいです。
ただ、保育園に通い始めの頃、最初の1〜2ヶ月は何度も休みましたね。2歳をすぎると、身体が急に丈夫になって、ほとんど休まず元気に通えるようになりました。
わかります。私の娘も生後7ヶ月から保育園に預けましたが、風邪を引いて治っては、また風邪ひいて……と、最初の頃はほぼ通えませんでした。今でも1ヶ月に1回は何かしらかかってますね。
保育園以外で、外部サービスは利用していたりしますか?
うちは僕が割と融通が効くのもあり、ベビーシッターなどは使ってないですが、仲の良い家族はファミサポを利用していますね。
※ファミリーサポートとは
ファミリー・サポート・センター事業は、乳幼児や小学生等の児童を有する子育て中の労働者や主婦等を会員として、児童の預かりの援助を受けることを希望する者と当該援助を行うことを希望する者との相互援助活動に関する連絡、調整を行うものです。 ※厚生労働省HPより参照
ただ、病気のときは病児保育を利用しています。最初は病院に預けると別の感染症をもらってきそう……という不安がありましたが、施設はその辺きちんとしていました。うちが利用しているところは、部屋が二つに分かれていて、病状によって部屋を分けています。
また、お迎えに行くと写真や手紙も添えてくれて、とても丁寧に見てくださっていたんだな、と思いました。
それはいいですね!私も懸念の方が強く、まだ病児保育の登録をしていなかったので、早速調べてみます。
外部サービスではないですが、保育園のパパ友・ママ友にも助けられていますよ。どうしても夫婦ともにお迎えが間に合わなくなってしまった時に、息子も一緒に迎えてもらって、そのお家でご飯とお風呂まで済ませてもらいました。本当にありがたいです。
ママじゃないとダメな時期に、パパができること
先ほども話に出ましたが、いわゆる「ママじゃないとダメな時期」に、パパだからできることはありましたか? また、ママとどう乗り越えていきましたか?
ママじゃないとダメな時は長かったですね。我が家では2歳くらいまで、どうしてもママから特別な安心を得ているようすでした。卒乳後も、ママの出番はまだ多かったです。だからと行って、妻に任せきりにして良いかというと、そうもいきません。母親は、常に細切れ睡眠ですし、子どもはずっとママ、ママ。
最初は協力していたパパも、ママではないとダメな時期に、ギャン泣きされて心折れちゃうパパも多いと聞きます。でもそれを一緒にパパも乗り越えてくれないと、どんどんパパではダメになり、ママにしわ寄せが来るのではと思うのですが。
家事は僕ができるとして、育児に関してはやはり授乳もある乳児期間はママがほとんど付きっきりになります。でもそのなかで、少しの時間でもいいので「ママの一人時間」を作ろうと意識しました。ママにとっては、それだけでも気分転換になる。
3〜4歳になってくると、パパとママが五分五分くらいで育児ができるようになるので、それまでは意識的にママの一人時間を作ることもパパの役目だと思いますよ。
ようやく息子と二人きりで出かけられるようになったのは、1歳半くらいからですかね。近所の公園にふらっと遊びに行ったり、買い物へ連れて行ったり。
実際に子どもと二人っきりになって、気持ちの変化とかありましたか?
子どもと二人きりで過ごすことで、子どもとの絆が生まれます。最初は1時間でもいいんです。これを乗り越えたら、さらに子どものことが好きになりました。「俺たち、頑張れたな!」と。
もし、パパが協力的でない場合は、パパと二人っきりにさせる時間を作ってしまうと良いと思います。例えば、ママが美容院へ行くときに、「ごめん、午前中だけ!」と託してしまう。
そうすると、パパは頑張るしかないので、なんとかして乗り越えられるんですよ。
私も産後2ヶ月の時に、どうしても取材へ行かないといけないときがあって、当時、完全母乳だったのですが、夫に3時間ほどお願いしたことがありました。それからも美容室などで数時間お願いしたりしているうちに、今では、ご飯からお風呂、遊びから寝かしつけまで、全部パパも出来ちゃいます。
私は最初から「パパでも大丈夫」な状況をなるべく作ろうと心がけきましたが、それはパパに頑張ってもらわないと実現できないことなんですよね。
そうですね。ママじゃなくても寝かしつけできるように、ママは近所のカフェにでもゆっくり行ってもらって、寝かしつけを僕が率先してやっていた時期もありました。無事に子どもが寝たら、「寝たよー」ってスマホでメッセージを送るとママが帰ってくるみたいな感じで。
すごい!なかなかそこまで出来ないパパも多いと思うのですが、パパの意識を変えるのにママができることってどんなことがありますか?
数時間でもパパと子ども二人きりにさせて、ママは一人の時間を楽しんできてください。だんだん大きくなってくると、子どももパパと出掛けられるようになるので、ママ同士で仕組んで、パパ同士子連れで集まるようにさせてみるとか(笑)
それはすごい助かりますね! 土日どちらかでも一人の時間があると、友達にゆっくり会えたり、一人でのんびりできたり、ママにとって貴重な時間になります。
実際には、どんなところへ行きましたか?
上野動物園はよかったですよ。動物園という施設の中なので、子どもが好き勝手走り回っても、道路に飛び出て交通事故にあう危険もないですし。それに二人きりで動物園へ行くと、なんだかデートっぽい気持ちにもなるんです(笑)。子どもをどう楽しませてあげようって、すごく色々考えちゃって。
パパがそんな気持ちで遊んでくれたら、子どももハッピーですし、ママも安心して出かけられますね。
夫婦関係は一度心が離れてしまったら終わり。パパもママもお互いに努力が必要
産後ガラッと生活も変わり、夫婦のカタチも変わってくると思いますが、心がけていることなどありますか?
先ほどもお話ししたように、本を読んで「なんでイライラしてるんだろう」などを勉強して、理解しようしました。
産後の女性は、体力の消耗、ホルモンバランスの変化、寝不足など何重にも疲労が重なりイライラしやすい。そこでパパは「妻が変わってしまった」と嘆くのではなく、「どうしてイライラしてるのか。どうしたら妻が前のように優しく振る舞えるのかを考えて、パパも努力することが大事だな」と思いました。
ママ側も然りですよね。イライラしてぶつけてしまうのは産後あるあるだと思いますが、その後にちゃんと謝ったり、日頃感謝の気持ちを伝えたり、パパへの愛情を伝えることが大事だなと。
男って「女性はなんでイライラしてるのだろう」と疑問に思っても、その原因を理解するために勉強をしない印象があります。さらに、「妻が変わってしまった」と思い込み、周りにもほとんど相談しないで不満を溜めてしまう。
ある調査結果によると、お子さんが0〜2歳のあいだに離婚をする家庭が圧倒的に多いことがわかったそうです。慣れない育児に加えて、睡眠もろくに取れない日々が続けば、イライラするのは当たり前です。そんな時期に、夫婦関係を見直さずに放置して、夫婦間に大きな溝を作ってしまう。そんなケースもあるのではないでしょうか。
やっぱり人間は、心が離れてしまうと修復は難しいですよ。そこは心が離れすぎないように、パパはきちんと努力した方がいいと思いますね。仕事は後から頑張れるけど、男女関係は一回でも心が完全に離れたら、もうどうしようもないじゃないですか。
人生は長いので、広い視野で夫婦関係を俯瞰すると良いですね。
お互いに育児と仕事が両立できるように、どちらかに負担が行くのではなく、お互いに協力して行くという北野さんご夫婦は、理想のスタイルだと思う方は多くいらっしゃると思います。
とても参考になる話をたくさんありがとうございました。

育児も仕事も家事も、役割を決めずにお互いに助け合い両立していくという北野さんのご夫婦スタイルは、今の時代にあった1つの理想のスタイルなのではないでしょうか。
北野さんに聞いた、すぐに実践できるポイント2つをまとめました。
- 育児に対するパパの意識改革のポイント
”パパと赤ちゃん、二人きりにしちゃおう”
二人きりにすると、パパは頑張るしかない!
1〜2時間であっても、パパにとってはそれが成功体験にもなるし、より子供を可愛く思えるという北野さんの実体験からもおすすめ。徐々に時間も延ばして、ママのひとり時間を習慣にできるといいですね。 - 産後の夫婦関係のポイント
”パパ・ママともに、お互いの心が離れないように努力すべし”
「産後の女性は、全治6ヶ月の身体の状態」だと表現されることもあるほど、体力を消耗しています。さらに、ホルモンバランスの急激な変化や、寝不足など、何重にも疲労が重なり、イライラしやすくなります。そこでパパは「産後から妻が変わった」と思ってそのままにするのではなく、「どうしてイライラしてるのか。どうしたら妻が前のように優しくなれるのかを考えて、パパも努力すること」が大事だと北野さんは語ります。ママ側もイライラぶつけてしまうこともあっても、日頃感謝の気持ちを伝えたり、パパへの愛情を伝えることが大事。お互いに努力が必要なんです。
これからもM relationsは、ママだけでなく、パパやママの職場の上司や同僚など会社や、仕事関係者など、ママを取り巻く関係性の重要パーソンにもインタビューをしていきます。